近年、食習慣を含めたライフスタイルの欧米化による肥満人口の急激な増加に伴い、非飲酒者において内臓肥満・インスリン抵抗性を主たる基盤として発症し、メタボリックシンドロームを高率に合併する非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD ナッフルド)が急増しています。NAFLDは、一般に非進行性の病態である非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic liver:NAFL ナッフル)と、肝組織で脂肪性肝炎を示し肝硬変・肝細胞癌に進行し得る非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)からなります。我が国の成人の男性で約30%、女性で約20%がNAFLDを合併し、NASHはその15~20%として男女とも罹患率2~5%と推計されています。
腹部エコーで脂肪肝を認め、肝炎ウイルスマーカー陰性、飲酒歴がなく、他の肝疾患を除外しNAFLDと診断します。NAFLとNASHの鑑別は、様々なスコアリングシステムや、画像検査、バイオマーカーなどが試みられていますが、確立したものはなく、肝生検によってなされます。
NAFLD全体からは8~21年の経過で5~8%が、NASHからは5~10年の経過で10~20%が肝硬変に進行し、肝硬変症例からは年率約2%の肝発癌を認めます。また、NAFLDでは肝硬変や肝癌に加え、肝外悪性腫瘍や心血管イベントの合併が多いです。他臓器癌では、男性では大腸癌、女性では乳癌の合併が多いです。NAFLDは糖尿病や脂質異常症、高血圧症、メタボリックシンドロームと合併することも多いです。NAFLDの予後規程因子は肝臓の繊維化の進展度によることが明らかにされています。肝繊維化が進展すると、肝硬変への移行や肝細胞癌の発生のみならず、心血管イベントの発生や肝臓以外の悪性腫瘍の発生に強く関与していることが報告されております。そのため繊維化の程度に応じて経過観察方法・治療法を考慮します。
NAFLDの治療は、メタボリックシンドロームの制御と肝繊維化の進展予防が主眼となります。NASHは肝硬変への進展や肝発癌のリスクにもなるので、積極的に介入を行います。NAFLDに対する治療の原則は、食事療法、運動療法などの生活習慣の改善により、NAFLDに合併している肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧症を改善することです。現時点では、NASH・NAFLDに対して我が国において保険適応を有する薬剤は存在しません。